嗅覚障害が8割ほど回復した話

注:以下は身体機能を理解していない人間の戯言なので、何よりもまず医者に診てもらうことが絶対である
自分の場合は、お粗末な工夫で回復したのか、単に時間が経ったから自然回復したのか良く分からない。
とりあえず「医者には診てもらっているが、他にできることはないだろうか」と考えている人の参考程度になればいいと思う。

 

嗅覚異常を感じたのは、武漢でのコロナ発生が報道された頃だった

中国武漢で何らかの感染症が発生し、買い物袋などを持って道を歩いていた人々が突然バッタリ倒れる、という動画を見た時の衝撃は忘れられない。
日本でも少しニュースになり始めていたが、初期はそれほど重大なものとは思われておらず、そういった動画も最初はフェイクだという人もいた。
自分もフェイクの可能性は考えたが、卒倒する人や、混雑する病院内の動画が何本もあったこと、そのうち動画が削除され出したことから信憑性は高いと感じた。
当時、自分は外国人や海外出張者が頻繁に出入りする場所にいたので「もし本当の話なら早いうちに感染するだろう」と考え、離れて暮らす家族にもすぐに注意喚起メールを送った。

頑健な私がマスクをつけたので、同僚から「そんなにインフルが心配なのか」と笑われた。
「どうも中国で強い感染症が発生しているらしいから」という話をしても「へぇ?」と曖昧な反応で、自分も「まぁ大したことはないだろうけど」などと言葉を濁した。
(のちにこの同僚に頼まれて、販売個数制限のあるマスク購入に協力した思い出)

今から思うと感染対策としては早期から注視していて良かったと思うが、実はコロナは関係ない。
ちょうどこの時期に嗅覚低下の異常を感じており、「もしやこれは武漢コロナではないか」と疑っていたという話だ。
結論から言うと自分に感染歴はなく、コロナは関係なかった。
おそらくその少し前の時期にひいた、なんでもない鼻風邪から嗅覚異常に陥っただけだと推察している。
ゆえにコロナの後遺症やワクチン接種の後遺症に苦しむ人たちとは完全に事情が違う


とにかく嗅覚が、以前の自分比 5% 程度になってしまった

重ねて言うが、素人が何かをしても治る保証などないので、医者へ行くのが一番だ
とは言いながら、自分は医者へは行かなかった。
もともと病院が嫌いな上に、日本でも感染者が増加しはじめて医療機関に行くのは避けたかったからだ。
誰かに話すと「いいから早く病院へ行け」と言われそうなので、何事もないふりをしていた。

しかし不思議なほどの無臭の世界に来てしまっていた。
(無臭生活のことを思うと、なぜか必ず脳内に『バラライカ』の「新しい世界に来ちゃったわ ♪」のフレーズが流れる)
子供の頃からコーヒーとその香が大好きで1日に何杯も飲んできたが、その素晴らしいアロマがまったくと言っていいほど感知できなくなった。
カップに鼻を近づけても、微かに土臭いような湯気を感じるだけだ。
どうにかわかるのは(これも好物の)カレーの匂いくらいだが、やはり鼻がカレーにくっつくほど近づけてようやくわかる、というレベルだった。

心地良い香はもちろん、悪臭系も全てほぼ無臭になってしまった
なぜか味覚は50%程度あったが、もちろん嗅覚異常の影響を大いに受けていたし、塩気ばかりを強く感じるようになった。
口の中が常に塩味なので「減塩できて都合がいい」と懸命に負け惜しんだが、味覚障害による塩気とリアルの塩気は明らかに違っており、料理に塩味がつくわけではない。
そんな馬鹿なことを考えつつ、「そのうち治る…はず…」を頼りに2、3ヶ月待ってみたが、全く改善しない。
ネットで少し調べて、亜鉛のサプリや、当帰芍薬散という漢方(これもサプリ)を摂取してみた。
しかし性格が短気なこともあり、3週間ほど服用しても変化もなかったので、どちらも一袋でやめてしまった。
世間ではコロナはますます猛威をふるい、ますます病院に行く気が失せてくる。
これはもう仕方がないのかもしれない。5%程度でやっていくしかないだろう
何しろ食い意地が張っているので、これまでの人生いろんなものを食べていた。
嗅覚は良い方だったので、悪臭に神経質になりすぎて苛立つことも多かった。

だからもういい…
無臭の世界には喜びがない…
だが、その代わりに臭害もない…
素晴らしいことじゃないか…

と思おうとしたが、やはり治るものなら治したい。
夏場などは、通常の夏バテに食欲減退が加わってガリガリになってしまった。
また「良い香を感じ取れない苦痛」より「悪臭を感知できないことの危険」の方がより重大だと実感した。
腐敗臭や燃焼臭、毒性のあるものの臭いが判別できないのは、思っていたよりはるかに不便だし危険だ。
例えば料理中に何かが焦げていても、なかなか気が付かないことがあった。
塩素系の洗剤を使っているのに、そのことも忘れてしまうのだ。
さらに体臭などが完全にわからなくなってしまったことも(爽やかながらも)怖かった。


そんなわけで取った方策

方策などというほど大層なことでも難しいことでもない、非常に単純なことだ。
それは「いろいろなものの匂いを嗅ぎまくって、嗅覚(脳)を再教育する」という方法である。
そもそも嗅覚を感知する細胞や、それを脳が理解する機能がなければどうしようもないのだが、5%程度でも残っているということは、5%のものを50%くらいに増幅させること(そのように錯覚させること)は可能かもしれないと考えた。

※めちゃくちゃな理論であり、根拠ゼロの譫言に過ぎない

方法を取った、というより、それくらいしかできることがなかった、という方が正解だ。
幸い、もともと香るものや匂うものが好きなので、家内には匂いのするものが多種多様にあった。
精油、ハーブ、スパイス、ソース、洗剤等、日常で使う匂いの強いものを、いちいち意識して嗅ぐということを続けた。
吸引が危険なもの以外は、必ずしっかり匂いを嗅いで、以前感じていた香のレベルと比べた。
例えば精油など、香が強すぎて瓶からまともに匂いを嗅げないものばかりだったが、一番酷い状態のときはどれが何の精油かすらわからないことがあった。
(言い当てることができたのはレモンとハッカくらいだろうか)
それが次第に「ちょうど良い芳香」となり、今では「やや強めの香」になっている。
「希釈なしでは瓶から嗅げなかった」レベルを100%とすれば、だいたい80%くらいだろう。
コーヒーも、前ほどではないが、きちんと香味を感じるようになり、やはりこれが一番嬉しい。
そしてとても尾籠な話だが、おならの臭さに安堵する日が来るとも思わなかった。
最初に異常を感じた頃から2年程度経っているし完全回復ではないが、困らない程度には戻っている。

しかし(これで3度目だが)何よりもまず病院に行ってきちんと診断してもらうことが肝心だ
回復したからこそこんな文章を書いているが、回復しなかった状態もあり得たかもしれないし、またいつ悪化しないとも限らない。
もしかすると、依然として5%の嗅覚のままなのに、回復していると錯覚しているだけかもしれないのだ。