omiaiとロマンス詐欺と情報漏洩と

omiaiというマッチングアプリ不正アクセスで情報漏洩した事件、被害に遭われた人々は大変に気の毒だと思うが、検索していて面白いことに気付いた。
マッチングアプリやデートアプリを利用したロマンス詐欺の横行だ。
ロマンス詐欺自体はおそらく太古の時代からあったと思われるが、昨今はデジタル化とコロナ禍の影響で特段に増えているという。
今その界隈からは「貴様10周遅れだぞ」と言われそうな事例がモリモリ山盛りにある。
ロマンス詐欺は、組織的な犯罪グループが行っているようで、お約束のパターンがあるようだ。

犯人グループの設定するキャラ
・たいていアジア系で美男美女(の素材画像をプロフに使用)
登録者は親日家を装い、使用言語は稚拙な日本語か英語、または中国語
・職業はサロン経営者や軍人
(経済的に豊かで、知能指数や身体能力が高く、一般人が憧れるようなもの)
・早期にマッチングアプリからLINEに誘い出し、フレンドリーで求愛的な会話を重ねる
・やたらお洒落な自宅や交友関係を演出(した素材画像をタイミング良く送って来る)
・「株やFX、油田といった投資関係の内情に詳しい親戚や友人」がいて、特別に儲かる方法を教えてあげると言って偽サイトに誘導し、最初は「損のない遊び」をさせ少額を儲けさせ、信頼を得る
・軍人設定なら「一般人には想像もつかない重要な秘密任務がある」云々言い、送金や荷物の受け取りをさせる
・「もうすぐ会える」「いずれ必ず結婚する」で釣り続ける

これらの手口は、日本人のマニュアル主義も真っ青なほどパターン化されている上、人の財布の話題を出してくる卑しさだけでも「なぜ騙されるのか?」と不思議に思うのだが、こうして情報が出揃ったあとだから言えることだろう。
若かったり、社会・対人経験が不足気味だったり、何より気分が舞い上がっていたりするとなかなか気づかないようだ。
また「認めたくない」という心理が最初から働いているように思う。

被害者のパターン
・「話し相手が欲しいだけ」「友達が欲しいだけ」という「軽い気持ち」でマッチングアプリに登録
・「怪しいなと思いながら騙されたつもりで」金を出す
・「怪しいと思ったから最初は惜しくない金額」を送金する
・「怪しいと思ったがどうせ一緒に暮らす、結婚すると言われて」増額する
・詐欺であることが判明したあとも「勉強代」で済ます

被害者の体験記などを読むと非常に整然としており、優れた頭脳を持っていそうなのだが、一方で繰り返しコロコロ騙されているタイプの人もいる。
基本的に詐欺師に騙される前に、まず「自分で自分を騙している」「自身の心の声に対してコミュ障」という部分で共通していると思う。
普段、自分の欲求を明確に意識もしないし、口にすることもない。
控え目でふわっとした「だったらいいな」程度しかない。
そこに「愛してるよハニー、良い投資先があるから2人で儲けて幸せになろう」と性欲と金銭欲の二大欲求の合わせ技でゴリゴリ言語化するこの詐欺犯罪は、それこそベストマッチだ。
詐欺でさえなければ、美しい恋人からの愛情と大金は誰もが求める普通の幸福像のひとつなのだから。
まさにロマンス詐欺の名に相応しく、そこまで高揚してみたいような気もしてくる。

 

そういえば自分も過去に小癪な金銭詐欺にならひっかかったことがある。
学生時代にバイト募集の掲示板を見ていたら「在宅で簡単な副業をしてくれる人。資料を送るので切手を10枚送るように」という募集があった。
学内掲示板の募集だから「まさか」詐欺だとは思わない。
それに資料請求は数百円程度の金額の切手だから「まさか」詐欺だとは思わない
だがこれを、いろいろな大学で一斉に募集したら、かなりまとまった額に換金できるだろう。
これが詐欺だと判明した時、自分は「少額だしなぁ…」と大学事務局や警察に通報などもしなかったが、それは本当の理由ではない。
まず「簡単な副業」に釣られたのは「楽して儲けたい」という気持ちがあったからだ。
その欲望につけこまれ騙されたのに、損失となると「手間暇かけて取り戻すほどの額ではない」と割り切るのはそれこそ謎だ。
この割り切りは、自分自身のプライドから「意地汚い上に間抜けな自分」を隠すために発生したものだ。
もし「楽して儲けたいんだよォ!」という自分の欲求をしっかり認め、その方策を普段から考えていれば、判断や結果は違っていただろう。
その感情が強烈になり、モラルが吹き飛ぶと、詐欺側に回るようになるのだが

とにかくそんな煮え湯を呑まされて以来、「無料」「お得」と謳われている場合は、実は大事なものを切り売りしていると考えてきたが、今は十分に料金を支払った上でも被害に遭う時代になっている。
マッチングアプリもロマンス詐欺も、かなり取られるが「払っただけの価値があるはず」が落とし穴だ。
 

ところでomiaiの場合、漏洩の原因は不正アクセスらしいのだが、その犯罪に対して怒っている人がほぼいないことが興味深い。
犯罪者が悪事を働くのは当たり前のことだから無罪(スルー)、対策が甘かった方が有罪、という発想があるようだ。
さらには「そもそもマッチングアプリ(のようなうんさ臭そうなものを)を使うのがどうなのか?」と言っている人も見かける。
この自分の文章にしても、ロマンス詐欺犯罪への批判ではなく「なぜ騙されるのだ?」の疑問から始まっているし、過去の金銭被害も「糞犯人」より「自分はなんて間抜けだったんだろう」である。
さらにハッキング以前に、最初から個人情報利用を目的で収集する国外企業もあり、それが公になっても「でも便利だから」と使用し続ける自治体やユーザーがごまんといたりする。
自分のスマホのアドレス帳がデーターベースである、という意識がなく、身内や友人の情報も当たり前のように巻き込んでいく。
これはもう被害者になるのがトレンドなのかな?と思うほどだ。
こうしてみんなで垂れ流していれば、そのうち「情報漏洩」という概念そのものがなくなるかもしれない。
漏れるものがなければ、困ることも怒ることも不安もなくなるだろう。